息のフーガ     細川航

 

息に雨がまじる
雨にきみの息がまじる、白い
雨に、息がまじる
息にきみの雨がまじる、息に
声とのどと指とくびとつめと、棘と、
黒に赤がまじる
赤にきみの黒がまじる、息の
赤に、黒がまじる
黒にきみの赤がまじる、雨が、
黒くなって赤くなって冷えて火のようになって、
のどを通って、のどをさかのぼっていって
雪、になって、雪、にならないで
氷点下でも雪にならないで
霧さえも引きつれないで暗い、観光地ではない異国のさびれた街を打ち
つづけて
息に雪がまじる
雪にぼくの息がまじる、まじる、
けしさる、けしさられる、
虚数的にふかい雪を
ほおばって声帯をうずめる
雪の声をだす
雪のさけび声をだす
雪の血のさけびいのり声をだす
みどりご
いのりご
息に雨がまじ/雨にきみの息がま/雨に、息が/息にきみの雨が/白い/白い/黒い/赤い/みどりの/白い/雨にきみの息が/声とのどと指/黒に赤/赤にきみの/赤に、/黒に、君のころしきる蹴りとのど輪とすべての無化への詠唱とのろいとのど輪とのど輪と頬に落ちた雪、と、息/雨にきみの息がまじる、白い、白い、白い、白い、あらわれるついにみどりほど白い氷点下の霧とブリザード下のホッキョクグマその白目、虚無へと角度をかえにらみつけていく横顔に透きとおる、みどり、ほどの白目、きみはミトン手袋で雪をつよく握る、どうにもなくならなった固まりを手袋を脱いで解けるまで握ってひどく手を冷やしてしまう きみは、手をほおずきのように息で温めている 白い、白い、白い、白い、
 
 
 
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