(ランナー あるいは破裂する風船) 原口昇平
ランナー あるいは破裂する風船
影をつかまれないよう夜明け前に
飛び立つ鳥たち その霧散よりも速く
夢見る少年にはまぶたがなかった
蜃気楼 あるいはパントマイムする手のひら
透明人間の存在に関する証言の
不可能性 その沈黙のさらに彼方で
明日が繰り返し思い出されている
重力 あるいは両手を縛られた巨人
一度も見たことのない壁の向こうを
描こうとする衝動 あるいは両眼を隠された恋人
あるいは不可視の帝国 あるいは砂に濡れた馬賊たち
帰るべき場所を探してさまよい 見つからないまま
いつの間にか日没に溶けている影 あるいは きみ