マクドナルド   落合白文
 

 
どれくらいの退屈と
柵が用意されていたのか
案山子のような心で
立ち回れとも?
違法駐車のサイドミラーを蹴飛ばす
自転車の申し子たち―ラメルジーが言う。
ある感情について多くの言語表現があるとするならば、
その感情は文字で表現するのは不可能だと。

「水たまりに沈む銀の髪留めを
コインか何かと間違えた少年は
それを拾い上げ、遠くに放り投げた。」

大人になったそいつは、今日も
地下鉄文明の憂鬱を引き受け
太陽は赤いものだと報せてくれる。
充血したその眼によって。
内面は夜明けの月のように白々しく
あらゆる嘘を見抜き、あらゆる頬笑みをたずさえて。
写真屋が言うには、男の職業史は
微笑にあらわれるというが、
そいつは、駐車場で身を屈めて掃除をする
若い女との甘美な妄想を打ち砕く、
彼女の野良猫のようなしゃがれ声を耳にした時に
微笑んだ。
―昼休憩。
工場の壁から湯気が立っていた。
傍らには、
小便で描かれた「M」


 
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