後日譚     田代深子

 

二度の散髪を過ごし ほったらかしに伸びる蔓と青々しい実 大きくなったら これをもいで誰かに 朝の窓から泣き怒る女声 もうあれはわたしではないし わたしはてきとうになったから もういいのだ

行く路も返る路も あるいはもちろんまえもってしかるべき路ではない ので どこでも同じくなり 行くべきところは返るべきところ てきとうすぎる反語 これらをてきとうにつなぎ延ばしのばす


それでのばさなくてはならない理由はなにと


たくさんの学び刷りつけを試みた結果 眼から鱗はこぼれ視界が変わってまた鱗は生えかわり 眼の色も鱗ごとに変わり 掌にボールペンで刻んで消えた五回目 いやな目なら回しなおせと言われても

おろおろと外を求めまわっても振りまわされるだけ 求めない これこそ無事の人 先生そうなんです でも パンフレットの束も それぞれ命がけでした 手も震え 泣きながら読んだのです


でも死なずにすんでいるのですから


路草につっこんで飛蝗をねらい尾を揺らすねこ 小さな樹にぎゅうぎゅうつまりざわめく椋鳥の群れ 脚を一本切って痛くなくなったと元気に飯を食ういぬ そういうものに わたしはなりたい

圧しだされたら崩れる地層 暑さで昇り冷えて降る水 泣いて泣いて叫んで疲れて眠って起きたら乳を吸う子ども 割れたフロントガラスから土埃がつもり草床になる車 ほったらかしの

どうともならぬもの

のばしのばしで ではまた後日の約束は てきとうに
青々と大きく苦い実もいだら誰かにあげる
 


 
inserted by FC2 system