なりたいものにしか   清野雅巳
 

 
バスを降りると
交差点のプランターボックスに
咲いた 菜の花が
ひんやりした風にゆれている

駅前にとめてある
自転車をよけて
線路ぞいを歩く
会社に向かう
いつもの通り道

きのうは
新しい仕事をまかされた
入社二年目なのに
初めてのこと
わからないこと
ばかりで戸惑う

なりたいものにしか
ひとはなることができない
それはそうなのだが
その通りなのだが

坂を上りきると
変電所のフェンスが見えた
その先が社屋だ
ゆっくりと
ぼくは息を吐く
今日いちにちを
受け止めるように 
 

 
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