水辺   細川航
 
 
 
この世界の人の言葉をすべて僕から守った輪郭で象られた、
いちばん遠い人の言葉がいちばん近くて いとしい こん
な朝は残酷な音楽が少ししか流れない、水辺を探して 眠
れないことを恥じて 死ねないことを謝って きみを生ん
で、自由な、つよい人間にしていく 森と、深い海と、学
習塾で会ったきみ いのちの、わずらわしい、動き 胎児
へとつづいていくような くるしい、うごめき ずっと、
誰のことでもなかったけど もう、誰のことでも、ない 
そのすべての場所 すべての人のように、 いま、きみの
目の前にいる 僕の、目の前に、いる ひとのように
 
 
 
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