故郷 軽谷佑子 風は重く 上ったつもりだったが 通りすぎる ひとりはつらい 半コートの衿の縫い目に 乾いた砂をとっておく 濡れていないから 夢はみない 空を埋めて 群れをあらわにする雲を 絶えず指でかきむしる からだをからだと 思わずに侵していく 雨が降る 雨が降らない 夢をみなくては、 距離をこえて 土地が雲に埋もれていく ひとりでに 侵されていく