……し、いちばんはじめの  原口昇平

 

画布の前に立つ
かつてこの裏側にぴったりはりついていた
出来事
いまでは剥き出しの

皮膚を失って
ぬるぬるした
生きているということは

描かれるまで
これほど痛みのにじんだことはなかった
だから確かだ

だからよろこびにまなざしをあげて

そのたびごとに剥がされれば
たちまち数え切れなくなるだろう
面影
とっておくためではなく
すでにめざめはじめた新しい表情のために
ふたり
ここでずっとおはようをささやく




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