御空からマロニー  市村マサミ

 

爆砕された明日に皆が途方に暮れている。

俺は白才を脇へ置いて出汁にされてしまった屈辱を削り続ける。
鶏肉や蒲鉾や白葱や原爆や夕焼けやストレスや国連なんかを。
全て美味しくいただく為にである。血まみれになって。

ところでこうも生活に困窮すると神にでも祈りたくなるものだ。
このように貧すれば捨てられるスープも乞いたくなるものだ。

賽銭泥棒を働いて高価な仏像を購入した奴。
妻を刺し殺して莫大な保険金で軽い葬式を組む奴。
母親の陰所に手を突き入れて自分のルーツを探す奴。
麻煙草を吸飲して地球の呼吸を我がものとする奴。

それらのごった煮を嫌いでも食べろと俺は育てられたから。
嫌も言わずに出汁を工夫し続けるのだ。
多少生臭くても喰らい続けるのだ。
テレビジョンが輝き続けている。

ああ。
御空からマロニーが垂れてきた。

ああ。俺にも甲斐があった。骨を削った甲斐が。
パッと見、電灯のスイッチの紐みたいじゃぁないか。

ああ。ああ。
掴んでも掴んでも千切れては落ちるのだ。
マロニーは滑るからね。這って行かねばならぬ。血まみれても。
嘘臭くともてらてらと虹光りしているのだから。



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