リタナイ  細川航

 

呼び声を
夜想にあわせていく
もはや黒い水でない
てみじかに
頬に触れ、さいごの
調号をとる
母指の内を失う
虚数のありかたをする
不明者と落ち合い
素粒子を朝に
夜想をあわせていく
音に導かれての
ことばの、溶解をする
ゆかせる
もはや
黒い水でない
十九月の
霜に埋もれた信号機
でさえ、
青の日に
朝と夜を希釈した
終わらない夕に
不明者、
わたしたちは
たとえない虹
不明者
あなたの手をとっている
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