夢と儀礼  早坂恒

 

昼間、いつもの場所で 
私たちは寝た 
夢を見た 
遠くまで行く夢だ 
二人で同じ夢を見て、二人で同じ人に会ったから 
眠っている間 
魂が抜け出してどこかへ行ったのだと思った 
その夜 
私たちは夢の中で覚えた歌をうたい 
いつもよりも一枚多く服を脱いだ 
台所で火を使い 
料理をし 
食べて体をやすめた 
夜もまた寝たのだ 

夢の中で 
私たちは同時に話し 
同時に聞くことができた 
歩く 
足の裏に土 
お互いはだかに近い格好で 
自然や精霊が身近にあって溶け合うように思った 
昔の偉大な人間の 
心がわかるようだった 

お互いに見つからないように 
こっそり笑って 
見えるものは、草も電車も区別がつかなかった 
涙が出てくるようだった 
遠くまで 
歩いて行けば一月くらいかかるところへ 
私たちは行く 
目を合わせずに話だけしていれば 
私たちとても可愛い二人で 

起きたあと 
頭がぼんやりとして、目は半開き 
夢日記をつける 
二人で話し合う 
どこへ行ったのか 
どこへ行こうとしていたのか 
魂は誰にあって、私たちは何に力を感じているのか 
知らないうちに何に従っているのか? 
道のりはあっという間で 
心だけが年をとったよう 
日の光は 
もう十分に差し込んできている 
起きたあと 
夢日記をつける 
一月後はもっと詳細に書けるだろう 
不思議なことが、夢の中で簡単にできるようになるだろう


 
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