レクチファイア 細川航
祈り狂ったわたしたちの海ごしの呼び音
なら未知のシソミで始まりと終わりの同
義のうたを始め続け終えられる
満ちて朝のあなたがほんとうのことなら
ば僕はこの上腕を支配するふるえを名づ
けないでいる 森の音楽堂ではりめぐる
増幅装置のあいだを笑って駆けめぐる人
があなたであり僕であるなら虚数、とい
う口の動きでつぐみの声の意味をこめる
、覆う
覆う目の覆うわたしたちはほんとうにも
うひざ折れて顔を手のひらに、耳で息を
している、オーロラのありかたでうたを
うたっている、胸を、くじらの絶叫がし
ていて、からがらわたしたちは心臓を三
拍子のままにしている
この素面の低音のなかついに君は歌い声
をやめてしゃべり声でいて、もはやつぶ
やきでもささやきでも僕はそれを聞くこ
とにした 低音のなか僕の側頭部にトマ
トの投げられた、ひだまりで驚く衝撃が
あって、でも僕は生まれてからずっと、
驚いていたよ、倒れながら、認識の途中
でいながら