そばだて  細川航

 

きりきりと叶わない音速で 
胸鉛むねなまりを溶かして指先までゆかせる 
渾然へ祈る 
あるままにある 
わたしの身体は火の様相をしてわたしを放さず、わたしは遠目に見ると
 踊るような仕草をしている 
殺すつもりで打つ、 
低音の連打、金属音の間隙、 
息、 
打音が 
渾然まで響けば 
ギターが入ってくれる 
果てで、不在者の 
ちいさな予感がする 
渾然で、 
不明者が 
手を振ってくれる 
人魚の歌声がして 
渾然の音を聴きながらただその姿を見つめる 
耳を 
ふさがず 
殺す気で聞く 
増幅装置を踏む 
192デシベル下において 
ハイイログマの、耳のそばだてで 
不明者のこえを待ってる 
胸がときおりのやさしい引きつりをして 
閉じようとしない目に涙をのばしている 
喉首を、おさえる、
おさえる、
僕にいま、あらゆる音楽が 
かかっていない 
完全な素面のまま高揚していく 
あらゆるものが楽音としていない 
鉄と木と、身の擦れ合う音 
あらゆるにくみの音 
それがそのままで、それが 
そのままで、
 
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