建国記念日   市村マサミ


1.

白いフラッグを振りながら
遅いクロックをやりすごしている

にやにやしながら
何度もいうのだ

「降参です降参です」

ワンカップからたった今
花のこどもたちが飛び立ったばかりだ
さきくとばかりうとうなりだ

2.

駅。

遠くを
見ているような
それとも

何も、見ていないのか。
そんな目、をした老人が
からになった
一合カップ酒の空き瓶に
綿毛の
飛んでしまった
首を垂れたおおきなタンポポを
さしていた。
倒産がどうのとか、
なにか
ぶつぶつ
唱えていたが、おれには関係のないことだ。

おれはパスケースを読み取り機に当て
ぴ、
という音を聞くか聞かないか
の絶妙な速度で

自動改札機を
抜ける、いつものことだ安閑だスポーツ新聞をしゅたっと買う
ひいきにしている球団がよぉ、
ここのところ調子がでないんだなぁ。
監督にジキジキに言ってやりたいせまってやりたい。
ち。舌打ちも出るよ。まったく。

3.

裸の女性がいやらしいことばを吐いている様子が描かれた
下劣な新聞を広げたオヤジが妄想のなかで
ワシは今、女を食ったぜ、余は満足じゃとでもいいたげな様子で
奥歯につまったねぎをとるように下品な音を立てた。
あのあぶらびょうたんみたいな姿のオヤジの
歯槽膿漏じみたぐずぐずの感じがあたしの今日一日につきまとうだろう
世の中ってどうしていつまでもこうなのかしら
あら
かわいい男の子
中学生かしら
あたしの中学のときの元彼に似てるわね
うふふ。
彼ったらウブであたしから手をにぎっただけで真っ赤になってたっけ
あの男の子も今頃誰かと恋愛をしてるのかしら?

4.

腐りかけた体に鎖かけられてふさぎ込みすぎたババアが
オレにギリギリの目をむけて荒みきった笑顔をしていやがる
気持ち悪いな こんな日もあるさと開き直ってみたけど
オレはほんとはクラスの奴等が陽気に食ってる
ハンバーガーを半分バカにしてる
バーサーカーにぼんやりと期待してる
感冒症のようにずっと
鼻水を垂らしのどを涸らしている

辛いくらいに古い感覚に
オレの爆弾を落とすんだ
暗い時代にずるいことを
ばれないようにやるんだよ
ぶっ殺すファックオフ

5.

夕刻の駅。
ふわぁふわぁ、ぱぁ。
と頼りなげに
だけどミサイルのように短絡へ向かってまっすぐ飛び立つ
不安定な綿毛たちよ。
ガーベラの子供たちに込められた

希望よ。

人々が吐き捨てた唾を浴びながら、
自ら吐いた唾をも浴びて腐臭漂う、
血まみれの白旗を振りながら
飛んでいくの、どこへ?
消えていくの、なんで?
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