歌 原口昇平
「去りゆくときには すべてをあげよう
私のものではなかった空を 私の風として」
「たったひとりのあなたに 吹くものとして」
「私の持たなかった孤独を あなたにあげよう」
「生まれ来たあとでは すべてを奪おう
あなたのものであったひとを 私の父として」
「ひとりになれないあなたに 吸いつくものとして」
「あなたの抱えた孤独を あなたから奪おう」
「水面をまなざすあなたを 背後から包み」
「そこに映る影はあなただと 耳元でささやこう
そののちあなたの見るものすべてから」
「私のまなざしがあなたに届くだろう
去りゆくときには すべてを奪い」
「生まれ来たあとでは すべてをあげよう」