歌 原口昇平 空をひとつに閉じたのは誰 影踏みに熱くなりすぎて 寒さを忘れた子どものために 時を歌いはじめるのは誰 海を泣き尽くしたのは誰 千に砕けた金の滴を 眼から飲む恋人のために 一日を涙に沈めるのは誰 幕を引き剥がしたのは誰 ひとびとを背後から包み その水仙はあなただとささやくのは誰 水晶体のなかの幻と 別れるよう呼びかけるのは誰 振り返るといなくなるのは 誰