ガソリンスタンド 落合白文 山間の町。ねぼけた香りがある 不眠不休のガソリンスタンド。 給油口にホースを突っこんだまま メーターが上昇するたびに 不埒な欲望が湧きあがり 天国にさえ近づいた気になる。痛々しいから止めろと、 記憶の友人たちが忠告する。 記憶の友人たちは辛抱強く、ぼくを見守っている。 はるか頭上から。 そこは天国の一部であり もはや、登り続けるだけとなった月に ぼくらはしがみついている。 ああ 何といい匂いだろう