原口昇平
 
 

風が終わり、また風が終わった
過ぎゆくものをいっぱいに受けて
遙かな帝国の瓦礫に立ちつづけたあの支柱から
とうに旗は奪われて、ただはためきだけが残像する

歌が終わり、また歌が終わった
生まれ来るものをひととき抱きしめ
近しい寝台の上へと運びつづけたあの夜の母から
とうに声は失われて、ただ息継ぎだけが残響する

刹那が終わり、また刹那が終わった
ここに両手を広げて、きみは
千年が終わり、また千年が終わった

ここに両手を広げたままで、
無限が終わり、また無限が終わった
きみはここに両手を広げたままで、愛している
 

 
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