孤独   落合白文

 
 
栃木県宇都宮に向かう国道沿い
廃線道路のうえで飼い犬を散歩させている。
トラック運転手とミニチュア犬の影が
夜気を含んだ街灯の明かりに照らされている。
首紐をほどいてもらった子犬は楽しそうに
辺りを駆け回り、足跡の匂いを嗅いでまわる。
主人である男の方は路肩に止めたトラックの側で
立ち小便をしている、午前零時。
ぼくは窓からの景色としてそれらを
歓迎する。

視線を机に戻して
壁に貼ったペドロコスタのポスターに一瞥してから
文字を書きはじめる。
廃線道路で立ち小便をしたいと思う。
近づいてきた犬が足にすがりつき
ぼくは裾に付いた茶色の毛を払いながら
そいつを抱きかかえて、
名前を尋ねるか名乗るかして
運転手と世間話をする。
それは孤独を慰め合う唯一の方法。
でも頭のどこかで用心している。
こいつがぼくの敷地にゴミを捨てていく
奴らかもしれないぞ、と。

 
 
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