しろくまが食べてくれなかった 細川航 雪原で ぼくが死んだあと おとずれたしろくまのおやこが ぼくを食べてくれなかった 首のあたりのにおいをかいで 「このにんげんのにくはだめだ」 ともごもご言って とおざかっていった ゆっくりと、音のしない でもずっと聴いていたい あしおとで こぐまも、 おやぐまの真似をして 冷たい鼻をぶつけ 「この、にんえんの、にうはためた、」 と、おどりのようなあしどりで いつまでも見ていたかった