訪れないことについて 落合白文
街は宣伝する車の謳い文句によって
扇状に広がり、またバッティングセンターの類では
せり上がる暑さよりも
乾いた空虚さを従えていたので 僕等は、長い橋の上からきらめく水面を眺めている。 そこにありもしない目印を探して。それでいて、 すくいあげるものなど何もないが、二人、ズボンを下ろして 流すくらいの言葉はあるさと、笑い声さえ
ふりまいて。飛沫を上げるもろもろの心象を
切手に使えばそれは、無数の浪の上澄みに
交わる程度で、底に沈まずに、そして刻まずに
ずれていくだけの七月に君は
土手でゴルフの練習をしていた男から盗んだクラブで、
道端の石ころを弾きながら歩いていた。それから君が肩に乗せた
折れかけたクラブ―その先に、やぶれた旗が
かけられているようで、僕はなんだかはかないと思っていた。 ラーメン屋へと向かっているあいだも 飲み食いしていたその最中にも、のれんを上げて店を出て?狼煙のように 煙草をふかした夜にすら。だから僕は、
古河や小山の花火大会に期待しつつ、忘れないのはこっちの方、と
さも知っているかのように、
もうすでに試験で合格したみたいな?好きな娘と付き合えたみたいな 馬鹿みたいな 馬鹿な笑いを こらえきれないのだね。
八月の手前で―